1. はじめに
当法人は、児童・生徒等が安心して学び、教職員が教育活動に専念できる安全で健全な教育環境を確保することを重要な責務と考えています。また、保護者、児童・生徒、入学希望者、卒業生、地域住民、来訪者、取引先、契約交渉の相手方、施設利用者その他当法人の事業に関係を有する者(以下「保護者等」という。)からいただく正当なご意見、ご要望及びご指摘を大切にし、教育活動及び法人運営の改善に努めてまいります。
一方、教職員の人格を否定する言動、威圧的な要求、暴力その他のカスタマーハラスメントは、教職員の尊厳と安全な就業環境を害し、児童・生徒等に対する教育活動にも影響を及ぼすおそれがあります。
令和8年10月1日施行の改正労働施策総合推進法及び同法に基づく厚生労働省の指針を踏まえ、当法人は、教職員をカスタマーハラスメントから保護し、安心して働くことのできる環境を確保するため、本方針を定めます。
なお、本方針は、保護者等からの正当なご意見、ご要望等を拒むものではありません。これらには引き続き誠実に対応する一方、カスタマーハラスメントに対しては、教職員個人の問題とせず、法人として組織的かつ毅然と対応します。
2.保護者等へのお願い
当法人は、すべての保護者等と良好な信頼関係を築き、ご満足いただける学校教育・教育活動の提供に誠心誠意努めております。この関係をより良いものとして維持するため、保護者等におかれましても、当法人の教職員一人ひとりの人格を尊重し、その言動にご配慮いただけますよう、心よりお願い申し上げます。
それでもなお、保護者等の言動が当法人の定めるカスタマーハラスメントに該当すると判断した場合には、教職員の尊厳と安全な職場環境を守るため、必要に応じて以下のような措置を段階的に、又は状況に応じて講じる場合がございます。
・事実確認及び安全確保のための録音
・録画その他の記録
・ハラスメント行為の中止のお願い及び警告(警告文の発出を含む)
・対応者の交代、場所の移動、面談・電話等の終了
・連絡窓口、連絡方法又は面談方法の指定、若しくは対応の打切り
・法令、学則、契約その他の規程の範囲内での校内その他施設への立入制限、取引停止又は施設利用等の制限
・悪質な場合の警察への通報又は相談
・弁護士等への相談の上での法的措置
なお、保護者等の言動への対応と、在籍する児童・生徒本人に対する教育提供又は学籍上の取扱いは区別して判断します。保護者等の行為のみを理由として児童・生徒本人に不当な不利益が生じないよう、関係法令、学則、契約、児童・生徒の安全及び教育上の必要性を踏まえて慎重に対応します。
当法人は、すべての保護者等に公平で質の高い学校教育・教育活動を提供し続けるため、教職員と保護者等の双方にとって安心できる健全な教育環境及び事業環境の維持に努めてまいります。何卒ご理解とご協力をお願い申し上げます。
3.当法人におけるカスタマーハラスメント
当法人におけるカスタマーハラスメントとは、労働施策総合推進法及び厚生労働省の指針の内容に基づき、職場において行われる以下の3つの要素をすべて満たす言動を指します。
・保護者等(法令上の「顧客等」に相当します。)から行われる言動であること
・教職員が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えた言動であること
・それらにより、教職員の就業環境が害されること
ここでいう「職場」には、学校その他の当法人施設のみならず、教職員が業務を遂行する出張先、訪問先、学校行事・部活動等の実施場所のほか、電話、電子メール、SNS等のインターネット上における業務上の対応も含まれます。
正当な苦情、意見、要望、問い合わせ等のすべてがカスタマーハラスメントに該当するものではありません。当法人は、社会通念上許容される範囲で行われる正当な申入れには引き続き誠実に対応します。また、法令に基づく権利の行使、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしないよう求めること、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること又は合理的配慮を求めること自体は、カスタマーハラスメントには該当しません。ただし、その申入れの手段・態様等については、前記の基準により個別に判断します。
◆定義の考え方
「社会通念上許容される範囲を超えた言動」とは、要求内容に妥当性がない場合、契約・学則・通常の教育活動等に照らして著しく相当性を欠く場合、又はその伝え方や態度が社会通念上相当でない場合を指します。たとえ要求内容に一定の妥当性があったとしても、暴言や威圧的な態度、長時間の拘束、執拗な接触、SNSへの投稿等、行き過ぎた手段であれば該当する可能性があります。
また、「教職員の就業環境が害されること」とは、そうした言動によって教職員が身体的又は精神的に苦痛を受け、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、就業する上で看過できない程度の支障が生じる状態をいいます。この判断は「平均的な労働者の感じ方」、すなわち同様の状況に置かれた社会一般の労働者がどう感じるかを基準とし、一度の行為であってもそれが強い身体的又は精神的苦痛を与え、就業環境を悪化させる場合にはカスタマーハラスメントにあたり得ます。
4.具体的なカスタマーハラスメント行為
以下に挙げる言動は、当法人の定めるカスタマーハラスメントに該当する可能性があります。ただし、これはあくまで例示であり、これらに限定されるものではありません。個別の事案については、言動の目的、経緯、要求内容、手段・態様、頻度・継続性、教職員側の対応、教育機関としての業務特性、教職員の心身の状況及び行為者との関係等を踏まえ、前章の定義に基づき総合的に判断します。
(1)要求の内容が妥当性を欠く、又は社会通念上許容される範囲を超える言動
・当法人の提供する学校教育・教育活動に瑕疵や過失が認められない場合での、不当な金銭補償、謝罪、処分等の要求・要求の内容が、当法人の提供する学校教育・教育活動とは関係がない場合(性的な要求、教職員のプライバシーに関わる要求を含む)
・契約、学則又は通常の教育活動の範囲を著しく超える特別な対応の要求
・実現が著しく困難又は不可能な要求
・教職員の私生活、住所、家族関係等のプライバシーに関する不当な要求
(2)要求を実現するための手段・態様が不相当な言動
・身体的な攻撃
殴る、蹴る、物を投げつける、唾を吐きかける等の暴行・傷害行為、わざとぶつかる行為
・精神的な攻撃
脅迫、名誉毀損、中傷、侮辱、人格を否定するようなひどい暴言多数の人がいる前で教職員の名誉を傷つける言動を行うこと
性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動、本人の同意なく性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報を第三者に開示すること(アウティング)、又はこれらの情報の開示を強要すること
SNS等への悪評の投稿をほのめかすことによる脅し
・威圧的な言動
大声を出す、机を叩く、教職員をにらみつける等の威圧的・恫喝的な言動教職員の話を遮る等高圧的に自らの要求を主張すること
暴力団その他の反社会的勢力との関係を示唆するなどして威圧すること
・拘束的な行動
正当な理由なく、長時間にわたり居座る、又は電話を継続する
退去を求めても応じない(不退去)
・執拗な(繰り返される)言動
合理的な理由なく、同じ要求や質問を何度も繰り返す
当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立て
同様の電子メール等を執拗に繰り返し送りつけること
・土下座、謝罪訪問の要求
正当な理由なく、土下座や、教職員の自宅への謝罪訪問等を要求すること
・差別的な言動
人種、国籍、性別、性的指向・ジェンダーアイデンティティ等に関する差別的な発言
・性的な言動
教職員に対して、わいせつな言動やつきまとい、食事やデートへの執拗な誘い等を行うこと
・教職員個人への攻撃・プライバシー侵害
教職員の容姿や服装についての中傷
教職員を盗撮し、又は無断で撮影すること教職員の個人情報、写真、映像、録音等を不当に公開し、又は公開をほのめかして威迫すること
教職員個人を特定できる情報(性的指向等の情報を含む)や、事実に基づかない誹謗中傷をSNSやインターネット上に投稿すること
(3)要求内容の妥当性に照らして、手段・態様が不相当な言動
・学校教育・教育活動の瑕疵の程度に比して、社会通念上、著しく高額な金銭補償を要求すること
・教職員の権限では対応することができない事項について、実現不可能な要求を繰り返すこと
・学校教育・教育活動の瑕疵の程度に比して、過度な謝罪の要求(土下座を除く)
5.カスタマーハラスメントへの対応
当法人は、カスタマーハラスメントが発生した際、何よりも教職員の安全と尊厳を守ることを最優先とし、組織として以下の対応を行います。
◆発生時の現場対応
(1)教職員及び児童・生徒等の安全確保
・保護者等による暴力行為や威圧的な言動が見られる場合には、速やかに当該教職員を現場から引き離す、対応者を交代する、場所を移動する、面談・電話を終了する等、身体的・精神的な安全確保を最優先します。
・児童・生徒等の生命・身体に危険が及ぶおそれがある場合についても、安全確保を最優先します。
・必要に応じて警察へ通報又は相談します。
(2)組織的な対応
・教職員一人に負担をかけることなく、上長や複数の教職員が連携して対応し、法人として責任をもって対処します。
(3)状況の正確な把握
・保護者等のご主張と現場の状況を正確に把握するため、法令に従い、必要に応じて録音・録画、電子メール・SNS等の保存、対応記録の作成その他の記録を行い、後の確認・対応に備えます。
・記録にあたっては、関係者の個人情報保護に十分配慮し、適切に取り扱います。
◆発生後の対応(事実確認と保護者等への対応)
(1)迅速かつ客観的な事実確認
・相談窓口や担当部署が中心となり、教職員への聴取、記録の確認、第三者(他の教職員や保護者等)の証言等をもとに、相談者の心身の状況にも配慮しながら、客観的かつ迅速に事実を確認します。
(2)毅然とした対応
・カスタマーハラスメントに該当する行為については、中止を求めます。
・同一の要求が繰り返される場合等には、連絡窓口、連絡方法若しくは面談方法を指定し、又は対応を終了することがあります。
・特に悪質と考えられる行為(暴行、脅迫、過度な要求の繰り返し等)については、あらかじめ定めた方針に基づき、書面による警告、校内その他施設への立入制限、取引停止又は施設利用等の制限その他必要な措置を講じます。
・必要に応じて、警察への通報・相談、弁護士等への相談、仮処分命令の申立てその他の法的措置を検討します。
(3)学校教育上の配慮
・保護者等のカスタマーハラスメントへの対応と、在籍する児童・生徒本人に対する教育提供又は学籍上の取扱いは、原則として区別して判断します。
・保護者等の行為のみを理由として児童・生徒本人に不当な不利益が生じないよう、関係法令、学則、契約、児童・生徒の安全及び教育上の必要性を踏まえ、個別に判断します。
・児童・生徒等が行為者である場合は、安全確保を最優先としつつ、その年齢、発達段階、障害特性その他の個別事情及び教育上の必要性を踏まえ、適切な指導・支援を含めて対応します。
(4)再発防止
・事案の内容及び対応経緯を必要に応じて記録し、個人情報の取扱いに配慮した上で関係部署に共有するとともに、対応方法、教育活動、説明方法、施設管理その他の課題を検証し、研修、手順の見直しその他必要な再発防止措置を講じます。
当法人は、すべての教職員が安心して働ける環境を守り、保護者等に公平で質の高い学校教育・教育活動を提供し続けるため、毅然とした対応を徹底してまいります。
6.教職員の保護及び相談体制
・カスタマーハラスメントを受けた、又は受けるおそれがある教職員は、上司又は当法人が指定する相談窓口に相談・報告することができます。カスタマーハラスメントに該当するか否か判断が困難な場合も相談することができます。
・相談窓口の担当者及び連絡方法は、教職員に別途周知します。
・当法人は、相談者、行為者その他の関係者及び事実確認に協力した者のプライバシーを保護し、相談・報告、事実確認への協力、都道府県労働局への相談、紛争解決の援助の求め、調停の申請等を理由とする解雇、降格、配置その他の不利益な取扱いを行いません。
・必要に応じて、産業保健スタッフ等と連携し、被害を受けた教職員の心身の回復に配慮します。
7.当法人の役員・教職員の行動
当法人は、当法人の役員及び教職員が、取引先その他の事業主が雇用する労働者等に対してカスタマーハラスメントに当たる言動を行わないよう、必要な教育・研修を行います。
また、当法人の役員又は教職員による他の事業主の労働者に対するカスタマーハラスメントに関し、当該他の事業主から事実確認等に必要な協力を求められた場合には、関係法令に基づき、適切な範囲でこれに協力するよう努めます。
2026年10月1日 学校法人 長聖
